(旧)自立生活センター・昭島の日常

東京都昭島市でひっそりと(笑)活動している福祉団体。地域で暮らす障害者の生活サポートや情報提供、移送サービスなどをやっています。

障害者のためのIT支援講座 報告 (通信68号より)

肢体不自由で言語障害のある障害当事者及び家族や支援関係者等を対象とした学習会を、2月下旬から全3回で開催しました。
 
第1回は「ITで出来ること、知る権利・伝える権利」と題し、講師に東京大学先端科学技術研究センターの奥山俊博氏をお招きし、コミュニケーションもひとつの権利だという事を学びました。
事例として、奥山氏も関わっておられる、障害学生支援のプロジェクト「Do-itプログラム」を取り上げ、何かを学ぶという時に必要な様々な配慮や工夫を、動画等の資料を使って紹介していただきました。
 

 

 

 

大学進学を選ぶ時にも、ともすれば障害があるがゆえに今までの経験や社会的抑圧等で「やりたい事」より「できそうな事」を基準にして選択してしまいがちですが、動画で観る彼らは「やりたい事」を選んでいて、生き生きした表情が印象的でした。併せて、アメリカの障害学生の現状が紹介され、学ぶに当たっての必要な配慮を学校側が提供する事が当たり前の状況に比べ、日本はまだまだ立ち後れていると痛感させられました。
 
 
第2回は「自分にあった入力装置を探そう・使ってみよう」という事で、東京都障害者IT地域支援センターの堀米真理子氏を講師にお招きし、同センターにある様々なIT支援機器の一部を持参していただき、実際に参加者の皆さんに体験してもらいました。
 

 
今回は、パソコンやタブレットに文字等を入力する支援機器が中心でしたが、印象的だったのが、家電量販店で購入できる汎用品でも、日常生活用具で給付される専門機器に劣らないレベルで使える物(例えばキーボードやマウス等)が多々あるという事。また、視線の動きで入力する装置に使われるセンサー等が、技術の進歩で小型化・低価格になっている事には、参加者の皆さんも驚いていました。数年前にそれなりの大きさで何十万円もした物が、今は数万円、物によっては数千円で買えます。
 
 
第3回目は「ITを使いこなそう・開発の現場から」と題し、言語障害を支援する機器「トーキングエイド」の開発に携わってこられた、株式会社ユープラスの代表取締役の小野雄次郎氏を講師にお招きして、トーキングエイドの開発苦労話や現状と課題、今後こうなったらいいなといった話をしていただきました。
トーキングエイドの専用機器は既に生産終了となり、汎用タブレット端末機器のアプリのみになっています。専用機器では、個々のニーズを取り入れようとすると機器ごと新たに作らなくてはいけませんが、アプリであればバージョンアップする事で新たなニーズにも対応ができ、そうした柔軟性やコストの問題もありアプリのみになったそうです。
 
 

 
ただその一方で、未だに専用機器のニーズは高く、参加者の中にも歴代のトーキングエイドをTPOに合わせて使い分けている方もいました。やはり専用機ならではの使い易さも大事という事で、現在はタブレットにアプリを組み合わせた専用タブレット端末機器を開発中で、この日は開発中の実機も持参していただき、参加者の皆さんも興味津々。まさに、専用機器とアプリのいいとこ取りといった感じでした。
 
 
全3回を通してそれぞれの立場や視点からお話しいただいた学習会は、参加者の皆さんからも大変ご好評をいただきました。
今回は、肢体不自由で言語障害のある方を対象とした内容でしたが、こうしたIT機器を活用している方はまだまだ少ないのが現状ではないでしょうか。今後は視覚障害者や聴覚障害者といった方々を対象とした講座も考えていきたいと思っています。何れにしても、実りの多い学習会となりました。