60名での車いす体験(通信71号より加筆)
「学年全員の子供に、車いす体験をさせたい」というものでした。
これまでにも何回か小学校からの依頼はありましたが、当事者の話がメインで、簡単な車いす操作を代表の子をモデルに行なうくらいでしたので、学年全員の体験というのは初めての依頼でした。
CIL・あきしまがお呼ばれしたからには、車いすを使う障害者のリアルな生活や、どのようなバリアがあるのかを伝える絶好のチャンス!当事者職員による「車いすでの生活について」の話と、基礎操作を含む「車いす体験」を行なう事にしました。
会場は体育館で、午後の授業2コマ分。成隣小学校の5年生は、2クラス約60名。自分が5年生だった◎十年前は5クラスあったので、今はそんなにクラスが少ないのかと、少子化を実感…。とはいえ60名もいるし、今回は上記のような内容なので、職員がほぼ総出で対応することに。事務所では代表がお留守番となりました(笑)。
昼休み中に車いす体験のセッティングをして、いよいよ午後の授業「総合的な学習の時間」が開始。
まず、当事者職員2名が「家庭での様子」と「生活する中での工夫」をそれぞれ話し、タイトル通り車いすの生活について、どのように暮らしどのように工夫をしているかなど、実生活を踏まえた内容をお話しました。おしゃべりも無く、みんな集中してまじめに聞いてくれました。
続いて車いすの基礎操作と体験。殆どの児童が車いすを、押すのも乗るのも経験した事が無いので、本当に基礎から行なわなければなりません。必要最低限の名称と注意事項を説明し、各クラスの代表者に対して、車いすの開き方や閉じ方、キャスター上げなどの基本操作の説明をし実践してもらう…。
必要最低限というものの、けがをしないよう丁寧に説明していたので、だいぶ時間がかかってしまいました。本来は、その後に全員が基本操作をやってみるという段取りでしたが、時間の都合で割愛となりました。
キャスター上げ。なかなか上がらない…
開始前に並んでいる間、それぞれに割り当てられた車いすで、押してみたり座ったり、一気ににぎやかに。乗り降りの際はブレーキをかけること、フットレストに乗って立ち上がらないこと、職員が子供達の様子を見ながら声をかけてまわりました。
スタートして、まずマットを越えます。マットの高さは約5cmですが、初めての車いすで初めてのキャスター上げでは、このくらいの段差でも簡単に越えられません。そして重ねたマットの部分は、車輪は動かないし車いすは上がらないので、みんな苦労していました。3ヶ所のマットに対して2人の補助員を配置していましたが、ほとんどの子が補助が必要なので、1人増やして各コースに補助員がつくことに。難易度を上げすぎてしまったかな…
時間がかかることを見込んで、3コース設置。
最初の一段。
ここが難所!
マットを過ぎるとスラローム。車いすがギリギリ通れる幅にカラーコーンを設置し、養生テープでコースのラインが引いてあります。てこずると思って作ったスラロームは、予想に反してみんな上手く通れていました。こちらは難易度が低かったかな…
写真では線がわかりにくいですね…
1名ずつ、押して・乗って・見守ってを順番に体験して、ワイワイガヤガヤで車いす体験終了。
その後、再び当事者職員から「バリアフリーの街について」のお話。
短い時間の車いす体験でも、バリアがある事を感じられたと思うので、街中にあるバリアの話も、より想像し易く聞けたのではないかと思います。
車いす体験でのガヤガヤぶりがうそのように、再び集中して話を聞く子供たち。
たくさんの子供さんがいると多少ざわざわしたりするかと思いましたが、成隣小の子供たちの「お話を聞く姿勢」は、素晴らしかったです。
最後に児童の代表者から感想を述べてもらい、先生の締めのお話で今回の授業は終わりました。「これからは違った風景が見えるはず」「心をバリアフリーにするのは、みんなの行動でできる」という、先生から子供たちへの投げかけの言葉が印象的でした。
今後子供たちには、“違った風景” がどのように見えて、それをどのように感じてくれるのか。そして、どのように行動してくれるのか……。
街中で障害をもった人を見かけた時、その人が “困っていたら” 声をかけてみて、“必要ならば手伝って” くれればと思います。
感想をいただきました♪
後日、5年生全員からの感想を冊子のようにまとめて、届けてくださいました。
とても真剣に話を聞き、そこから車いすで暮らすこと、障害を持って生きること、社会のあり方…それぞれに一生懸命考えてくれたことが伝わってきました。
多くの子が、車いすでの行動の大変さを感じてくれたようです。また、小さい段差でも大きなバリアであることがわかり、通学路や街中でのバリアに気がついたり、どんな風なら大丈夫なのか考えたり、バリアフリーに興味を持ったと書いてくれたものもありました。
そして、街で障害のある人と出会った時に…ということを書いてくれた子もたくさんいました。日常の中に、障害がある人も当たり前にいる風景が見えていてくれたらうれしいです。