(旧)自立生活センター・昭島の日常

東京都昭島市でひっそりと(笑)活動している福祉団体。地域で暮らす障害者の生活サポートや情報提供、移送サービスなどをやっています。

ロード&ゴー


午後のまったりした時間。
事務所の自動ドアが開くや否や叫び声が。

「救急車を呼んで!!!」

突然、何事ぞッ???

「頭を打ったみたいだから、救急車を呼んだ方が……。」

血相を変えたおばさんが慌ててそう言うので、どうしたのか聞くと、すぐ近くで自転車に乗っていた別のおばあさんがこけて頭を打ったらしい。

おおぉぉっっ!
年末に習った救命救急の技術が、早速役に立つ時が来たのか!!



……あれ?どういう順番でやるんだったっけかなぁ??
レサコ持っていないのに……。
AEDも無いなぁ……。

などと、不謹慎な事を考えながら行ってみると、倒れた自転車、頭を抱えるおばあさん、介抱しているおじさんがいた。


そんなに大事にはなっていないようで、ちょっホッとした。
……と同時に、せっかくの講習の成果が発揮できないと思った。


「大丈夫ですかぁ?」
のんびりと声をかけてみる。



どうやら、建物の補修か何かのために掛けていたシートを、職人のおじさんが周りを見ないで煽ったか何かしたようだ。
自転車のおばあさんは、それに引っかかったのか驚いたのかして倒れてしまったらしい。

救急車を呼んだ方が良いという僕らに対しておばあさんは、大丈夫だから呼ばないでくれと言う。
これから家に人が来るからとか布団を干しっ放しだからとか、頭の事より大事な事情があるようだ(笑)

“そうまで言うなら、お望み通り呼ばなくてもいいかな?”と思ったが、痛がっているので、やっぱり救急車を呼ぶ事にした。
救急車を呼んで対処してもらった方が、何かと補償してくれそうなんだけどなぁ……。
自分の事ではないのに、打算的な考えだな(笑)。



こういう時、僕は意外と冷静に対応できるようだ。
昔、車・バイク用品屋で買い物して帰ろうとした時に、店から出ていったバイクが目の前で派手に転んだ。
何事もないように店内に行き、店員に救急車の手配を頼んで、そのまま帰った事もあったし……。
新青梅街道でバイクの右直事故を起こした時も、“ああぁぁ、バイクが壊れていく……”と、ゴロゴロと転がりながら見ていたし、片側2車線のど真ん中で“このままでは他の車に轢かれる”と周りを見ながら歩道に避難していたし……。





『火事ですか救急ですか?』
電話の向こうからの問いかけに答え、救急車を手配する。
状況を説明し、おばあさんに言いに行くと、やっぱり“救急車なんて呼ばないでくれ”みたいな事や、家の事が気になるような事をしきりに訴えていた。家より自分自身だろ、今は!!

そうは言っても、弱気になっている人にあの音はキツイと思い、も1度電話してサイレンは鳴らさずに来て欲しいと頼んでみた。
『近くに行ったら消します。』



そして救急車はやってきた。
交差点を曲がる直前、現場まで10メートルの地点までサイレンを高らかに鳴らしながら……。
あ~あ。


おばあさんは自力で、職人のおじさんも一緒に救急車に乗り込んだ。
リアハッチが閉められたら車内の様子は分からないので、もう僕はお払い箱かな?

職人の若い兄ちゃんに、何かあったら呼んでくれと伝言して事務所に戻る。




しばらくしてパトカーがやってきた。
一応、事故扱いになるからなのかな?
もう興味は薄れていたので、このブログネタ用に写メ撮ってとっとと仕事に戻った。




お巡りさんも救急隊員も誰も何も聞きに来ないという事は、本当に大した事は無かったんだろうね。




by:は

ちなみに……。
タイトルは、救急車の活躍を描いた小説から戴いた。